マイカーでの通勤途中に阿部くんが交通事故。事故後の対応は大丈夫??
電車・バス等の交通機関が不便であったり、日常の営業や配達等、通勤や業務の遂行にあたって従業員にマイカーを使用させるケースは少なくありません。ところで、こうしたマイカー使用中に事故が発生した場合、企業の責任はどうなるのでしょうか?
1.マイカー事故と企業責任
交通事故を起こした場合、刑事上、行政上、民事上の責任が生じますが、その責任は運転者のみならず、その使用者である企業も負うことがあります。
通常、企業が負うのは民事責任で、民法上の「使用者責任」と自動車損害賠償保障法上の「運行供用者責任」があります。平たく言えば、金銭面での損害賠償責任のことです。
近年、交通事故の件数自体は減少しているものの、その賠償金額については1億円を超えるケースも珍しくなくなっています。社員の交通事故が、企業経営に重大な支障を与えるリスクは、かえって高まっているといえます。
2.ケース別にみる企業責任の有無
①業務等でマイカー使用を認めているケース
⇒会社に責任がある
②通勤・業務でのマイカー使用を一切禁止し、実際に順守しているケース
⇒会社に責任はない
③通勤のみにマイカー使用を認め、これを順守しているケース
⇒原則、会社に責任はないが、実際には責任を負わされることがある。
例えば、マイカー通勤者に対して、ガソリン代・駐車場代・保険料といった実費を支払っている場合等では、マイカー通勤に対して積極的との解釈がなされ、企業が運行供用者責任を過去の判例もあります。
ここでのポイントは、マイカー通勤者に支払う通勤費にあります。会社としては、電車・バス等公共交通機関の代わりにやむを得ずマイカー使用を認めているという状態とすべきであって、単純に実費を支給するのではなく、公共交通機関を利用した場合の金額を参考に支給金額を決めることが重要となります。
なお、通勤のみにマイカー使用を認めているはずが、実際には業務でも使用、これを会社が黙認しているケースでは、当然ながら、企業の運行供用者責任が問われることになるので注意しなければなりません。
3.会社がマイカー使用を管理するポイント
従業員のマイカー使用から生じる企業リスクを回避・防止するためには、マイカー通勤規程及び業務使用規程を作成し、厳格に運用することが大切です。
マイカー通勤を全面的に禁止するのか許可するのか、許可するとしたらどのような要件と手続のもとで許可するのかを明確にすることがマイカー通勤によるリスクを回避するために重要です。また、就業規則等により会社が従業員のマイカー通勤を禁止することに法律上の問題はありません。
ただし、それまでマイカー通勤を認めていたにもかかわらず新たにこれを禁止する場合には、就業規則の変更による労働条件の不利益変更となりますので、従業員側の同意をとったり、代替的な通勤手段を提供するなどの手続をとる必要があります。
全て、あるいは一部の従業員に対してマイカー通勤を認める場合には、マイカー通勤に関するルールをまとめた社内規程を作成することをお薦めします。
このような社内規程を「マイカー通勤規程」「マイカー業務使用規定」などと呼びます。
(1)【通勤途中】マイカー通勤規程のポイント
原則禁止を明確にするために、「マイカー通勤許可申請書兼誓約書」による申請(車種・車両番号・免許証・車検証・運転記録証明書※1・保険事項・通勤経路等)を行わせ、許可及び安全運転の誓約をさせる。
任意保険の加入を義務付けるとともに、保険金額も明確に定め、加入できない従業員にはマイカー使用を認めない。
マイカー通勤者に対して、公共交通機関を使用している通勤者に準じた通勤費を定める。
(2)【業務中】マイカー業務使用規程のポイント
マイカー通勤規程と同じく、許可制にし、かつ、日報管理(行先・目的・出発時刻・帰着時刻・走行距離等)を提出させる。
事故窓口を会社に一本化し、一貫して適切な対応ができるような体制を整える。
(3)休職期間は、自社で可能な長さを設定する。
また、勤続年数による期間の長短を設けたほうが望ましい。
厚生労働省のモデル就業規則では、一律「 年以内」としているが、中小企業では、役所や大企業のような長期の休職期間を設ける余裕はない。
自社にとって許容可能な期間を検討し、貢献度に応じて設定すべきである。貢献度に応じてということであれば、勤続1年未満の従業員を休職制度から除外するのも当然といえよう。
(4)復職を認めるかどうかの権利が会社側にあることがわかるように作成する。
厚生労働省のモデル就業規則では、「原則として元の職務に復帰させる」とあるが、これでは復職させるのが当然と解釈でき、会社側に復職許可の権利が十分にあるとはいえない。正しくは、「休職中の従業員が復職を希望する場合には、所定の手続きにより会社に願い出なければならない」とし、できるだけ復職のハードルを上げておくことが必要である。
精神疾患のケースは特に質が悪いので、休職期間満了とともに当然に退職してもらう流れを規定化しておくことが重要である。
※1:過去5年、3年、1年間の交通違反、交通事故、運転免許の行政処分の記録について証明(自動車安全運転センター)している。
4.任意保険の盲点
従業員が個人で任意保険に加入する際、その「使用目的」には十分に注意しなければなりません。例えば、使用目的を「通勤」としながら「業務」で使用していたり、「日常・レジャー「としながら「通勤」で使用しているケースです。
いざという時は告知義務違反を問われ、保険金が支払われない可能性がある。あわせて年齢制限、免許証の色など、事実と異なる契約となっていないかどうかも注意すべきです。会社側としても年に1度の契約内容等の確認実施を怠ってはなりません。
従業員のマイカー使用は会社にとっても便利であるがゆえに、相当の企業責任があることを十分に留意してほしいところです。
まとめ
従業員のマイカー使用では、事故発生時の企業責任が避けられないことを前提に、マイカー使用管理を徹底することが大切です。
原則、通勤事故の企業責任はありませんが、通勤費に内容次第では企業責任も問われる可能性があります。
従業員個人の自動車任意保険では、使用目的等に間違いがないよう、厳しく注意するとともに会社側の内容確認を怠らないようにしましょう。
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